118 並べられた飛行機

倉庫のあたりから、バケツ、板切れ、藁【わら】などいろんなものを孝、二郎、正雄、俊夫が運んできて翼の上に上がった徹に渡す。徹、手当りしだいに座席にぶち込む。徹、翼から飛びおりて、正雄に

徹「これで飛ぶのにえろう手間がかかるで……あれ泰ちゃんは?」

正雄「なんか飛行機に墜とされん工夫をするいうて倉庫におるんや」

115 土手

川上めざして走るトラック。あとから伍長の乗った軍馬が駆ける。助手席の軍曹が運転している兵隊四と大声で話している。

軍曹「どれぐらい行けば橋があるんか?」

兵隊四「あと十キロぐらいであります」

軍曹「壊れてもかまんからぶっ飛ばせ!」

タイヤがくぼみを通って兵隊達、座席で大きくバウンドする。

113 門のところ

良介「……あの騒ぎで逃げられたけど、河原に隠れとんを見張っとんや、早よう早よう」

組長と中隊長、うなずき合って行こうとする。

良介「二人か?おいさんら?二人じゃ危ないよう。暴れ出したら手がつけられん」

中隊長「おい、そこの、おまえ!」

と近くの歩哨を呼ぶ。

良介「三人でも危ないよう、生け捕りにしたいんやろ」

112 小屋のかげ

組長が顔を上げたところを良介見てとって、

良介「あっ組長さんや!」

とささやくと俊夫に食いかけのチョコレートを渡して飛び出ていく。止めようとする徹を孝が制して、

孝「なんぞ考えがあるんや、見よう」

良介が組長に何か熱心に、身ぶりを交えて話しているのが見える。