123 河原に向う道

軍曹が中隊長に報告している。

中隊長「敵兵と子供がぐるじゃと!」

軍曹「はい、間違いありません。トラックの乗り捨ててあったところから見て、町に来とるのも確実であります」

中隊長あたりを見回す。すでに雲隠れしている良介。

中隊長「あのガキもそしたらぐるじゃ。いかん、飛行場がやられる。軍曹、早く出せ!」

とトラックに飛び乗る。兵隊達も荷台に飛び乗る。組長を残して、トラック発車。

121 河原へ向う道

敵兵生け捕り隊の一行が先を急ぐ。

組長「でもどうやってその暴れる奴をつかまえたんじゃ?」

良介「ワナや、ワナ。落とし穴に落としたんや」

組長「ほう……そらお手柄やなあ」

中隊長「ところで坊主、お前どうやって川を渡ってきたんや?」

そのとき川上のほうからトラックが飛ばしてくるのに一同気付く。

120 中尉の部屋

ベッドの上に中尉と整備兵、並んで腰かけている。

整備兵「少しでもおやすみにならんと……」

中尉「学生のときから徹夜には慣れとんだ。徹夜したほうがかえって頭が冴えるのよ。それで、その片腕、打ち抜かれた飛曹はどうなった」

整備兵「はあ、それから出血がひどォなりましてな。人間ちゅうもんは血ぃ抜かれると眠うなるんじゃそうですな。それで右手だけで操縦桿を握っとんやそうですが、寝てしもたら終りじゃけ、いうんでバッと手を離してほっぺたをしばき上げよったそうですらい。下から見よるとそんでもってフラフラしとんで気が気じゃなかったですらい」

中尉「ほう……学生じぶん、講義中に眠とうなって頬をたたいたことはあったがなあ。そうか、……血がへると眠とうなるんか」

と幾分明るくなった外を見つめる。

119 倉庫

どっからみつけてきたのか泰助、ペンキの缶とハケを持っている。翼の上に上がると、操縦席に窮屈そうに座って、機器を調べているベンのところへ行って例のコミックをとってくる。開いたコミックを片手に翼に何か描きはじめる泰助。

118 並べられた飛行機

倉庫のあたりから、バケツ、板切れ、藁【わら】などいろんなものを孝、二郎、正雄、俊夫が運んできて翼の上に上がった徹に渡す。徹、手当りしだいに座席にぶち込む。徹、翼から飛びおりて、正雄に

徹「これで飛ぶのにえろう手間がかかるで……あれ泰ちゃんは?」

正雄「なんか飛行機に墜とされん工夫をするいうて倉庫におるんや」