読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

125 飛行場――門のところ

トラックが急ハンドルを切って入ってくる。急ブレーキで中尉の前にとまると中隊長、飛び降りる。

中隊長「どうなっとる、中尉」

中尉「はあ、それが、九番機が勝手に動いて……」

中隊長「勝手にじゃない!敵兵じゃ、敵兵に乗っ取られたぞ!」

124 飛行場

エンジン音を開いて、中尉と整備兵が出てくる。櫓の歩哨も急いで降りてくる。倉庫から出てくる九番機、子供達と仔犬があとを追う。朝日がさしてくる。左の翼には拙【つたな】いけれどもそれと分かる星条旗。右の翼にはスーパーマンのSの字。そして尾翼の39。滑走路の端へと向う。何が起っているのか理解できずに立ち尽くす中尉。整備兵と歩哨の二人が九番機へと走る。

123 河原に向う道

軍曹が中隊長に報告している。

中隊長「敵兵と子供がぐるじゃと!」

軍曹「はい、間違いありません。トラックの乗り捨ててあったところから見て、町に来とるのも確実であります」

中隊長あたりを見回す。すでに雲隠れしている良介。

中隊長「あのガキもそしたらぐるじゃ。いかん、飛行場がやられる。軍曹、早く出せ!」

とトラックに飛び乗る。兵隊達も荷台に飛び乗る。組長を残して、トラック発車。

122 倉庫

操縦席のベン右手を上げて振り下ろす。台の上に上がっている徹と孝がプロペラにしがみついて飛び降りる。一発で始動するエンジン。泰助、尾翼の上でまだペンキを持っている。

121 河原へ向う道

敵兵生け捕り隊の一行が先を急ぐ。

組長「でもどうやってその暴れる奴をつかまえたんじゃ?」

良介「ワナや、ワナ。落とし穴に落としたんや」

組長「ほう……そらお手柄やなあ」

中隊長「ところで坊主、お前どうやって川を渡ってきたんや?」

そのとき川上のほうからトラックが飛ばしてくるのに一同気付く。

120 中尉の部屋

ベッドの上に中尉と整備兵、並んで腰かけている。

整備兵「少しでもおやすみにならんと……」

中尉「学生のときから徹夜には慣れとんだ。徹夜したほうがかえって頭が冴えるのよ。それで、その片腕、打ち抜かれた飛曹はどうなった」

整備兵「はあ、それから出血がひどォなりましてな。人間ちゅうもんは血ぃ抜かれると眠うなるんじゃそうですな。それで右手だけで操縦桿を握っとんやそうですが、寝てしもたら終りじゃけ、いうんでバッと手を離してほっぺたをしばき上げよったそうですらい。下から見よるとそんでもってフラフラしとんで気が気じゃなかったですらい」

中尉「ほう……学生じぶん、講義中に眠とうなって頬をたたいたことはあったがなあ。そうか、……血がへると眠とうなるんか」

と幾分明るくなった外を見つめる。

119 倉庫

どっからみつけてきたのか泰助、ペンキの缶とハケを持っている。翼の上に上がると、操縦席に窮屈そうに座って、機器を調べているベンのところへ行って例のコミックをとってくる。開いたコミックを片手に翼に何か描きはじめる泰助。