126 滑走路

ベン、子供達に向って大声で、

ベン「Thank you !」

子供達、行け、行けと手を振りながら、

正雄、泰助「オーケー、オーケー!」

と叫ぶ。動き始める機体。

追いかけて走る子供達。そして兵隊達。

中隊長「撃つな!飛行機を出せ!急げ!」

と叫ぶ。兵隊の一部、それで他の飛行機へと走る。飛び上がって乗ろうとしておどろく。ガラクタのつまった操縦席。

追いかける兵隊、子供達を尻目にぐんぐん加速する九番機、滑走路があとほんの少しになったとき、すうー、と浮かび上がる。飛び上がって喜ぶ子供達。

朝日に向って飛び上がるとゆっくり弧を描いて反転し上昇していく機体。青みをおびてきた空に消えていく。

124 飛行場

エンジン音を開いて、中尉と整備兵が出てくる。櫓の歩哨も急いで降りてくる。倉庫から出てくる九番機、子供達と仔犬があとを追う。朝日がさしてくる。左の翼には拙【つたな】いけれどもそれと分かる星条旗。右の翼にはスーパーマンのSの字。そして尾翼の39。滑走路の端へと向う。何が起っているのか理解できずに立ち尽くす中尉。整備兵と歩哨の二人が九番機へと走る。

123 河原に向う道

軍曹が中隊長に報告している。

中隊長「敵兵と子供がぐるじゃと!」

軍曹「はい、間違いありません。トラックの乗り捨ててあったところから見て、町に来とるのも確実であります」

中隊長あたりを見回す。すでに雲隠れしている良介。

中隊長「あのガキもそしたらぐるじゃ。いかん、飛行場がやられる。軍曹、早く出せ!」

とトラックに飛び乗る。兵隊達も荷台に飛び乗る。組長を残して、トラック発車。

121 河原へ向う道

敵兵生け捕り隊の一行が先を急ぐ。

組長「でもどうやってその暴れる奴をつかまえたんじゃ?」

良介「ワナや、ワナ。落とし穴に落としたんや」

組長「ほう……そらお手柄やなあ」

中隊長「ところで坊主、お前どうやって川を渡ってきたんや?」

そのとき川上のほうからトラックが飛ばしてくるのに一同気付く。