129 村役の家の前

集っているのは大人の男だけ。そこへ泰助らが走ってくる。良介、俊夫も入れて合わせて七人。ごろじいもやってくる。

村役「こらこら、女子供は何されるか分からんけぃ、山におらんか」

泰助「平気、平気。なんともないなあ、ベン」

といって抱いている仔犬に話しかける。

126 滑走路

ベン、子供達に向って大声で、

ベン「Thank you !」

子供達、行け、行けと手を振りながら、

正雄、泰助「オーケー、オーケー!」

と叫ぶ。動き始める機体。

追いかけて走る子供達。そして兵隊達。

中隊長「撃つな!飛行機を出せ!急げ!」

と叫ぶ。兵隊の一部、それで他の飛行機へと走る。飛び上がって乗ろうとしておどろく。ガラクタのつまった操縦席。

追いかける兵隊、子供達を尻目にぐんぐん加速する九番機、滑走路があとほんの少しになったとき、すうー、と浮かび上がる。飛び上がって喜ぶ子供達。

朝日に向って飛び上がるとゆっくり弧を描いて反転し上昇していく機体。青みをおびてきた空に消えていく。

125 飛行場――門のところ

トラックが急ハンドルを切って入ってくる。急ブレーキで中尉の前にとまると中隊長、飛び降りる。

中隊長「どうなっとる、中尉」

中尉「はあ、それが、九番機が勝手に動いて……」

中隊長「勝手にじゃない!敵兵じゃ、敵兵に乗っ取られたぞ!」

124 飛行場

エンジン音を開いて、中尉と整備兵が出てくる。櫓の歩哨も急いで降りてくる。倉庫から出てくる九番機、子供達と仔犬があとを追う。朝日がさしてくる。左の翼には拙【つたな】いけれどもそれと分かる星条旗。右の翼にはスーパーマンのSの字。そして尾翼の39。滑走路の端へと向う。何が起っているのか理解できずに立ち尽くす中尉。整備兵と歩哨の二人が九番機へと走る。