2016-09-08から1日間の記事一覧

24 ほら穴

こちら、切り株を囲んでのお昼ごはんが終ったところ。泰助がベンの本を読み始める。(この本、実はコミックです。) 泰助「なぁ兄ちゃん、この主役の強い奴、ベンによう似とるなぁ」 正雄、泰助の指さす絵をのぞき込む。その向うに上半身はだかのベン。

23 兄弟の家

三人で朝ごはん。浪子が立ったすきに、二人してかばんに食べ物を詰め込む。泰助、お椀に指を突っ込んで、[あちち]です。浪子が急須を持って戻ってきて、 浪子「もうちょっとゆっくり食べなさい。からだに悪いわよ」 とお盆でお茶を二人に差し出す。二人、…

22 (D・I)ほら穴(外は良い天気)

こちらもベッドの様に藁を敷いている正雄。泰助は湿っている藁を外へ運び出している。ベンは桶にくまれた水と手拭いでからだをふいている。筋骨隆々の上半身。 正雄、藁を敷き終えると、 正雄「ベン……ベン」 と呼んでおいて、ベッドの上をポンポンとたたく。…

21 兄弟の家

きれいに洗ってもらって筵【むしろ】の上で、皿のおもゆをぴちゃぴちゃ飲んでいる仔犬。正雄と泰助がそれを熱心に見ている。上がり框に腰をかけて茶を飲んでいるごろじい。 ごろじい「おおかた、仔犬が生まれ過ぎて捨てられたんじゃろう。このご時勢にむだ飯…

20 (F・I)ほら穴の中

ベンがライターの光で写真を見ている。写真に向って少し微笑むが、すぐに哀しくため息をつく。目尻に光る涙。写真に写ったベンとその家族。ベン、チョコレートをかじると火を消す。

19 (F・I)兄弟の家

外は強い雨。正雄と泰助が土間に筵【むしろ】を敷いて、その上に座り込んで草鞋【わらじ】を編んでいる。そこへ勝手仕事をしている母親が漬け物樽を抱えてやってくる。 浪子「どうしたん。そんなに大【おお】きに編んで」 兄弟、ちらっと目で合図。 泰助「こ…

18 ほら穴の中

正雄がチョコレートを食べている。そこへ泰助が戻ってくる。 泰助「あ、兄ちゃんだけ、狡【こす】いぞ」 正雄「心配せんでも、泰の分もあるわい。……ベンな、ものすごたくさん持っとるんや。この箱の中な、何やへんな機械と本でな、その隙間にこれがぎっしり…

17 森の中、昨日の焚き火のあと

泰助、木の枝や、草を抱えてきて、焚き火の跡を覆っていく。だいたい覆い尽したとき、はっと人の気配に気付く。少し登ったところに兵隊が一人立っている。降りてきながら、 兵隊「何しとる?、坊主」 泰助「(兵隊が近づくのを待って)虫取りの用意や、おじ…

16 森のはずれ

泰助、下の様子をじっと見ていたが、ぱっと立ち上がると全速で駆け出す。

15 山道(五十メートルほど下を通っている)

五人ばかりの兵隊と村の人二人がいる。兵隊達は銃剣を持っている。村の人が兵隊に何か説明している。

14 森のはずれ

泰助がぴょこんぴょこん跳ねながらやってくる。少し見晴らしのいい所に来たとたん身を伏せて、下をのぞく。

13 ほら穴の中

直径三メートルほどで子供なら五人は十分入れる。光とりの縦穴があり、結構明るい。わらが敷いてあり、その上に兵隊が寝ている。 正雄「ここ、作っとってよかったなぁ。しんどい[め]、した甲斐があったな」 と言いながら鞄から蒸した芋と麦混じりの握り飯…

12 (F・I)ほら穴の入り口

木の枝を組んでその上に草をかけてカモフラージュしてある戸がごそっと動いて泰助が顔を出す。きょろきょろあたりを見回す。そこへ正雄が桶に水を入れて、ちゃぷちゃぷしながら小走りに持ってくる。 泰助「誰もおらんかった?」 正雄「ほい。(と桶を渡して…

11 (F・I)ごろじいの家

いろりを囲んでごろじいと二人が座っている。ごろじいは火ばしで火をつついて魚を焼いている。その干し魚を食べている正雄と泰助。 ごろじい「それで、その穴は誰にも見つからんかい」 泰助「うん。兵隊さんが動かなんだら……あそこを知っとんのは、徹らぐら…

10 (F・I)森の中

日はとっくに暮れている。落下傘の布や枝を燃やしてその傍らに二人で膝を抱えて座っている。兵隊は少し離れた木にもたれて座って焚き火の炎をじっと見つめている。 正雄「どうすらい。もう帰らんとまた夕飯【めし】ぬきや」 泰助「ほっとくわけにはいかんよ…

9 (F・I)森の中

とぼとぼ引き返す二人。 泰助「死んじゃったかなぁ」 正雄「落ちる前に逃げんとなぁ」 泰助「日本の飛行機とちがうね」 正雄「おぉ、ありゃ、おおかたアメリカのぉや。町で空襲警報なったとき見たんとおんなじや。」 しばらく黙ってうつむいて歩く二人。泰助…

8 向い側の山の斜面

ときどき小爆発を起して燃える機体。 破片が飛び散り、原型をとどめない。 (F・O)

7 山の頂

息も絶えだえに登ってくる二人。夕日が顔に当たり汗が赤く光っている。二人とも一言も言わずに一点を見つめて、はぁはぁやっている。

6 山の斜面

飛ぶように駆け下りる二人。