2016-09-12から1日間の記事一覧

49 谷間の道

道の両側に腰の高さぐらいの草がうっそうと茂っている。並んで歩く兵隊。一人が箱を抱えている。蝉が一匹、木から木へジジー、と啼いて飛び移る。それに兵隊二人、気をとられる。とたんに地面に置かれた蔓【つる】がピンと張る。もんどりうって倒れる兵隊。…

48 くぼ地

正雄とベンを取り巻いている四人。正雄が仔犬を抱いている。 正雄「こいつが飛び出していくもんやから二人で追っかけたんや。危のうかった」 徹と二郎と孝、ベンをまじまじと見ている。ベンが笑いかけたのに応えて、徹、右手を挙げ、孝、微笑み、二郎、無理…

47 茂みの中

目だけ出している泰助、 泰助「兄ちゃん、どしたんやろ」 そのとき後ろから木の枝が飛んできて、四人の前に落ちる。いっせいに振り返る四人。かなり後ろの方に正雄とベンが伏せっている。

46 ほら穴の前

日本兵が一人、立って辺りを見回しているところへ、もう一人ほら穴から例の箱を抱えて出てくる。二人して辺りの様子を探っている。

45 茂みの中

下の方にほら穴が見える。入り口が開いたままになっている。横倒しになっている木のかげから四人が頭だけ出してのぞいている。木漏れ日が揺れる。 咄嗟に三人、二郎を残して頭を下げる。 二郎、遅れて、慌てて、頭を下げる。

44 山道の終わり

馬が一頭、木の枝に繋がれている。回りを歩き回っている四人。徹が馬の腹を手慣れた手つきで触って、 徹「ええ馬やなぁ。こんなええ馬、ここら辺じゃ、ちょっとお目にかかれんぜ。(よじ登る感じでまたがる)こりゃ、軍馬かな」 泰助「軍馬やて、そりゃ事じ…

43 ほら穴

寝ころがっているベンと正雄の上を舐めずりまわって遊んでいる仔犬。正雄はベンの地図を拡げてみている。 仔犬、突然、殺気立つと入り口の下を擦り抜けて出て行く。慌てて追いかける正雄、ベン。

42 山道(馬がかよえるぐらい太い道)

かんかん照り。三人が、少し遅れて二郎が、首に手拭いのようなちいさい布を巻きつけて歩いていく。 徹「なぁ、泰ちゃん。ほんとにあの板菓子、まだあるん?」 泰助「そらもう、箱に一杯ぐらいあるで」 徹「そうか、よしよし」 泰助「でも、もろうたら、三、…

41 ごろじいの家

いろりの横で四人が顔をつき合わせている。少し離れて木の彫り物をしているごろじい。しばらくして四人が顔をはなす。 徹「おらぁ、あの甘いお菓子がもらえんならなんでもやるぜ。このところ甘い物にはとんとお目にかかれんからな」 二郎「そんな、まずいよ…

40 四つ辻

泰助が歩いてくる。角【かど】で走ってきた二郎とはち合わせ。二郎は泰助の後ろに隠れる。(犬の啼き声、近づく) 二郎「(喘【あえ】ぎながら)泰ちゃん……助けて」 大きな真っ黒な犬が走ってきたのを泰助、なんなくあやす。 泰助「どうして逃げるの?」 二…

39 孝【たかし】の家

寝ころがって本を読んでいる孝。読んでいるのは、林不忘「丹下左膳」机の上には四、五十冊は本が積んである。そこへ姿をみせる泰助。 泰助「孝【たか】ちゃん、ちょっといいものあげるよ」 (WIPE)

38 畑

ばあさんが大根を抜いている。それを集めて歩く徹。そこへ泰助が、平均台を渡るように両手を広げて、あぜを通ってくる。 泰助「徹ちゃーん。ちょっと」 徹、かごを置くと、巧みに畝【うね】を飛び超えてくる。 徹「なんだい、泰ちゃん」 泰助「いい[もん]…

37 徹【てつ】の家

土間の半分を占めている厩【うまや】で徹の母親が馬にまぐさをやっている。そこへ勝手口から泰助が顔をのぞかす。 泰助「おばさん、おはよう。徹ちゃんいる?」 徹の母「ああ、おはよう。徹ならばあちゃんと畑だよ」 泰助「ありがとう」

36 (F・I)兄弟の家、玄関

勢いよく飛び出してくる二人。 道まで出て、 泰助「昼過ぎまでに、話つける」 正雄「急ぐこたぁないぞ。大人に聞かれんな」 泰助「大丈夫、大丈夫」 と言って駆けていく。少しの間見送った正雄が逆向きに歩き出そうとすると、家の中から、 浪子「正【まさ】…

35 兄弟の家

真夜中。並んだふとんでねている二人の目が明いている。じっと柱時計を見ている泰助。振子が左へ行くたびに白く光る。正雄は腕まくらをして真っ直ぐ上を見ている。 正雄「帰りたいやろな」 泰助「え」 と正雄の方へ寝返り。 正雄「ひとりぼっちだ」 泰助「ん…

34 木の根元

手製の十字架が立っている。その下に置かれた認識票。泰助と正雄が正座して手を合わせている。ベン、少し離れて座り、二人をじっと見つめている。

33 墜落現場

三人でリュックをかかえて遠出をしてきている。あたり一面黒こげ。ベン、操縦席らしきものを見つけ、焼け焦げた布をさぐって認識票を見つける。ぎゅっと握りしめる大きな手。正雄と泰助、少し離れて見ている。