2016-09-18から1日間の記事一覧

62 一本道、やぶのところ

かなり雨足が弱まっている。泰助と徹のあとを兵隊二人と傘をさした軍曹が続く。やぶの中の孝に合図する泰助。兵隊四が急に喋り出すので泰助、どきん。 兵隊四「ついとらんなぁ」 兵隊三「いや、全く。しかし、中尉殿には、この雨は天の恵みかもしれんぞ。こ…

61 一本道

トラックがぬかるみから出ている。兵隊は荷やタイヤを確かめている。 軍曹「世話かけたな。もちと景気がよけりゃ小遣いでもやるんやが、……まあこれで我慢せいよ」 といも二つを泰助に渡す。そのいもをお手玉しながら、 泰助「この雨じゃあ、また落ちるよ。ど…

60 一本道

二人、トラックから十メートルぐらいのところまでくると急にぶらぶら歩き出す。轍【わだち】を泥水が川のように流れている。二人、様子をうかがいながら近づく。エンジンのうなる音。タイヤがすべる音。泥水が飛び散る。 徹「手伝おか、兵隊さん」 とエンジ…

59 やぶの切れ目

泰助と徹と孝が様子を見ている。 遠くに見えるトラック。どうやらぬかるみに入って立ち往生しているらしい。二人で後追ししている。 三人頭を付き合わせてしばらく相談。孝が肩をはずませて二人に策を授けている。 泰助「じゃ、あと頼む」 と徹と二人で一本…

58 村のはずれ

どしゃぶり。一行はやぶを抜け、見通しのよい一本道に出る。先頭をきっていた徹が急に梶棒を持ち上げブレーキをかける。全員おもわずつんのめる。 遠くにトラック(幌付き)が止まっている。どうみても軍のもの。一行、一言も言わずに方向転換。やぶの中へ荷…

57 柳の木のところ

すごい降りに、繋がれていた軍馬が驚いて跳ね回る。繋いであった道しるべの杭が折れて、軍馬、一度思い切りいななくと、雨を突いて駆け出す。 無残に折られ、用を為さなくなった道しるべの下半分にたたきつける雨。

56 畑の中の道

低く低く飛んで、ときどき畑に口ばしをつけて虫をとる燕。それを見ながら、 徹の祖母「こりゃ、すごい降りが来るで。兵隊さん、あんたらも早うどこぞへ……」 先程の兵隊三人が徹の祖母をつかまえて質問している。 伍長「まだ雲はすいとるぞ。晩まで保【も】つ…

55 ごろじいの家の前

泰助が一番に飛び出してきてあたりを見回す。一層雲が多くなってきている。 泰助「(納屋に向って)ベーン」 弁当を抱えた徹、箱をかかえた正雄、孝、二郎、と出てきて、最後にごろじいが出てきたときに、ベンも仔犬を抱いて納屋から出てくる。仔犬を泰助に…

54 (D・I)飛行場の司令室

壁にはられている地図。九州を中心に、沖縄、フィリピンと続く。やはり線がたくさん引かれている。 部屋の真ん中の椅子に座って地図をぼんやり見ているのがここでは一番偉い中隊長。人の足音がして整備兵がやってくる。 整備兵「(敬礼して)報告します。九…