2016-09-21から1日間の記事一覧

99 (F・I)土手の上

子供達とベン、座り込んでしまっている。その回りを元気に走り回る仔犬。泰助、濁流に石を投げ込んでいる。 二郎「アメリカも考えないやっちゃ。せっかく兵隊さん、助けちゃろいうのに」 徹「今日に限って、爆弾、落としていくんやからなあ」 ベンは子供達の…

98 川

橋げただけ残ってあとは消えてなくなっている。雨のせいで泥にごりの水が、ごうごうと流れている。近くの草木も焼け焦げている。(F・O)

97 土手

徹と泰助が先頭で駆け上がってくる。次々にはあはあ言って膝に手を合てがいながら登ってくる子供達。一様に向こう岸を見つめて立ちつくす。

96 土手に続く道

一行、さすがに疲れてとぼとぼ歩いている。深夜だが月明かりでかなり明るい。 徹「良ちゃん、あとどのくらい歩くん?」 良介「この土手の向こうの向こうだよ」 徹「ほんとか……着いたんか!」 と駆け出す。あとを追う子供達。ベンはゆっくり走る。

95 村役の家

兵隊二「へー車が消えたんか。どうりで軍曹殿が慌てよったはずじゃあ。しかし車が消えるたぁな。村役さん、村に車を動かせる奴、おるんか?」 村役「そりゃ、なんがなんでも居【お】らんですたい」 一同、うーんと考え込む。 兵隊二「子供が車を動かせるはず…

94 町中

伍長が町の人をつかまえて聞いている。 伍長「出会い橋を渡らんで飛行場へ行くにはどうすりゃええか?」 町の人「ん……そりゃ浜行って漁師に舟、借りれりゃ早いけんどなあ……」

93 村役の家

兵隊一「とまあガキにこんな[め]に合わされたのよ」 兵隊四「ほう……いや、わしらもなあ、ガキといやあ妙なことが……」

92 町――大通り

焼け焦げた家々の間を馬に乗ってとぼとぼ行く伍長と軍曹。まだなおあとかたづけに右往左往する町の人々。

91 (F・I)村役【むらやく】の家

兵隊四人、晩めしを出してもらっている。供仕をする村役夫人。少しはなれて座っているのが村役。 村役「町はひどうやられましたなぁ」 兵隊四「よりによって我々が銃座に着いとらんときに来よる。奴らも卑怯なもんよ」 この大見えはちょっと気まずく、一同、…

90 (F・I)海岸

たき火を囲んで八人。良介の隣りに座っている徹が 徹「どして良ちゃん、壕へこなんだん?」 良介、うつむく。 徹「俊ちゃん、どして?」 俊夫、助けを請うように良介を見る。 徹「何【なん】ぞ悪さしよう思うとったんやろ?」 ますますうつむく良介。その頭…

89 ごろじいの家

明かりを消して月明かりで木彫りをしているごろじい。口を真一文字に結んで表情が厳しい。(F・O)

88 (F・I)兄弟の家

浪子がいろりばたで縫い物をしている。 開け放した勝手口から孝の母が入ってくる。上がり框【かまち】に腰かけながら 孝の母「やっとおさまったようやねえ」 浪子「ええ、今日のは威嚇やなかったみたいやねえ。……孝【たか】ちゃんもうちの子らと一緒に行った…

87 飛行場

兵舎の入り口で中隊長とさきほどの隣組の組長が立ち話。 組長「はい、そうなんではありますが、しかし、子供があそこまで、うそはつけんと思いまして」 中隊長「あれだけ捜索して見つからなんだものを小学生のガキがとりこにしたと言うのかな?」 組長「はあ…

86 (F・I)海岸(砂浜)

たき火を燃やしているベン。少しはなれて良介と俊夫が座っている。パチパチ燃える火。良介、砂に何か指で書いていたが、急に座りなおすとベンに向って土下座する。 良介「ごめんなさい」 俊夫も座りなおしたところを、おまえもというように頭を押えつけ、土…

85 兄弟の家

浪子、戻っている。上がり框【かまち】に腰を下ろし、頬杖をついて考え事。はっと気付いてかまどの方へ立つ。吹きこぼれて消えかかっているかまど。(F・O)

84 町――焼けこげた家々

すっかり暗くなっている。あちこちでまだくすぶっている。消火の■■■■■■■ができている。泰助と孝と二郎と正雄、路地のところまでやって来る。真っ黒に焦げた荷と荷車。一同、一瞬、立ちすくむが、泰助は燃えかすを引っかき回し始める。徹は壕から壕へと良介と…

83 村――池のはた

村の人達、ところどころ赤く燃えている町の方を見下ろしている。心配そうな浪子さんもいる。夕日が落ち切って水平線だけ