2016-10-02から1日間の記事一覧

120 中尉の部屋

ベッドの上に中尉と整備兵、並んで腰かけている。 整備兵「少しでもおやすみにならんと……」 中尉「学生のときから徹夜には慣れとんだ。徹夜したほうがかえって頭が冴えるのよ。それで、その片腕、打ち抜かれた飛曹はどうなった」 整備兵「はあ、それから出血…

119 倉庫

どっからみつけてきたのか泰助、ペンキの缶とハケを持っている。翼の上に上がると、操縦席に窮屈そうに座って、機器を調べているベンのところへ行って例のコミックをとってくる。開いたコミックを片手に翼に何か描きはじめる泰助。

118 並べられた飛行機

倉庫のあたりから、バケツ、板切れ、藁【わら】などいろんなものを孝、二郎、正雄、俊夫が運んできて翼の上に上がった徹に渡す。徹、手当りしだいに座席にぶち込む。徹、翼から飛びおりて、正雄に 徹「これで飛ぶのにえろう手間がかかるで……あれ泰ちゃんは?…

117 櫓

見張りの兵隊が椅子の上で眠りこけている。山の方が白らんできている。

116 飛行場――倉庫

九番機を見上げている一同。 泰助「これやな、孝【たか】ちゃん」 孝「(胴体の下のタンクをたたいて)これが油やろ。間違いない」 正雄「よっしゃ、飛行機のことはベンにまかしとこ。わしらはなあ……」 とみんなを集めて指示をする。

115 土手

川上めざして走るトラック。あとから伍長の乗った軍馬が駆ける。助手席の軍曹が運転している兵隊四と大声で話している。 軍曹「どれぐらい行けば橋があるんか?」 兵隊四「あと十キロぐらいであります」 軍曹「壊れてもかまんからぶっ飛ばせ!」 タイヤがく…

114 小屋のところ

じっと様子をうかがっている子供達。 あちこちから兵隊が集ってきて、良介と組長を先頭に走り出す。それを見送って小屋のかげから走り出る一行。門の外燈の下を通って奥へ消える。

113 門のところ

良介「……あの騒ぎで逃げられたけど、河原に隠れとんを見張っとんや、早よう早よう」 組長と中隊長、うなずき合って行こうとする。 良介「二人か?おいさんら?二人じゃ危ないよう。暴れ出したら手がつけられん」 中隊長「おい、そこの、おまえ!」 と近くの…

112 小屋のかげ

組長が顔を上げたところを良介見てとって、 良介「あっ組長さんや!」 とささやくと俊夫に食いかけのチョコレートを渡して飛び出ていく。止めようとする徹を孝が制して、 孝「なんぞ考えがあるんや、見よう」 良介が組長に何か熱心に、身ぶりを交えて話して…

111 飛行場――門のところ

ここだけぽっかり外燈がついている。中隊長に頭を下げている組長。 組長「御馳走になりました」 中隊長「いやいや……これから浜の方へいかれるんか?」

110 飛行場――門の前の小屋のかげ

正雄とベン、そして良介と俊夫が休んでいる。二郎の膝で仔犬が寝ている。そこへ徹と泰助と孝が身を低くして戻ってくる。 泰助「だめや、兄ちゃん、見張りが回りを取り囲んどる」 良介「おかしいなあ、普段は誰もおらんのに」 孝「何【なん】ぞ気付いたんかも…

109 兄弟の家

時計が三つ打つ。小さな明かりでまた縫い物をしている浪子。ふっと顔を上げて仏壇を見ると、針を置いて立ち上がる。仏壇の中でキラキラ光っている銀紙の包みをとり上げて、なんだろうと見ています。 時計が三つ打つ。小さな明かりでまた縫い物をしている浪子…

108 飛行場

櫓の上に見張りが一人。そこから見下ろすと、飛行場をとりまいて百メートルおきぐらいに歩哨が立っている。ちゃんと立っているもの、座り込んでいるもの、中には眠りこけているものもいる。

107 土手を登る道(壊れた橋のところ)

こちらは勢いよく登っていくトラック。土手を登りきったところで急ブレーキ。荷台の中の二人、思い切りひっくり返る。ぽかんと口を開けている座席の二人。

106 線路

キキィーと派手な音をたてて貨物列車が急ブレーキをかける。歩くぐらいのスピードに落ちた車輌に子供達、草むらから飛び出て、いろんな方法でしがみつく。ベンは片手で俊夫を抱え、逆の手一本で棒を握りしめる。 機関車の窓から機関士と車夫が顔を出している…

105 町はずれ

乗り捨ててあるトラック。近くの井戸で兵隊達が水を飲んだり顔を洗ったりしている。兵隊二、トラックの方へ小走りで向っていきながら 兵隊二「早よせい。ぶっ飛ばすぞ」 と運転席に飛び乗って手早くエンジンをかける。バックして道に入って三人を乗せると激…

104 線路

孝がレールに耳をあてている。 孝「早よう、急げ、急げ」 俊夫を除いたみんなで燃えそうなものを集めている。ベンがライターと紙きれを使って火をつける。 孝「よっしゃ、みんなこっちや」 と鉄橋とは逆の方へ駆け出す。一同、百メートルほど走るとレールの…

103 倉庫

尾翼にOB-109と掻かれている機体にゆっくり近付いていく中尉。なるべく音をたてないように翼に登り、風防をそーっと開け、上半身を突っ込む。そこで懐中電燈をつけ、計器の下の配線の一つを鋏で切ろうとする。その時、倉庫の奥で戸の開く音。中尉、慌てて鋏…

102 中尉の部屋

ベッドにじっと腰かけている中尉。月明かりで顔の半分だけ浮き上がっている。不意に立ち上がると、とある引き出しをあけて何か取り出す。月光に鈍く光る鋏。