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後書き S61・8・30 執筆完了 H18・11・31 Web掲載 終戦間近の昭和二十年、九州でのお話。山ん中に墜ちた米軍偵察機。一人、生き延びたアメリカ兵が最初に出会ったのは、十才と十二才の子供兄弟です。学校の先生に鬼畜米英と教っていた彼らは、その目で何も…

131 村役の家の前

ジープ到着。まず仔犬のベンが飛び出していく。制する大人達を振り切って子供達が飛び出して行く。 ジープから降りる大男、ベン。肩にサンタクロースのように袋をかついでいる。再会。回りで不思議そうに見ている大人達、米兵達をよそに喜び、はねまわる子供…

130 山のふもと

女、子供が心配そうに集っている。下の様子をうかがっている浪子。

129 村役の家の前

集っているのは大人の男だけ。そこへ泰助らが走ってくる。良介、俊夫も入れて合わせて七人。ごろじいもやってくる。 村役「こらこら、女子供は何されるか分からんけぃ、山におらんか」 泰助「平気、平気。なんともないなあ、ベン」 といって抱いている仔犬に…

128 タイトル終って村へ続く一本道

進駐軍のジープが五台ほど土煙を上げて行く。

127 エンドタイトル

重ねて、実写のフィルムで原爆から終戦、そして進駐軍上陸まで見せます。

126 滑走路

ベン、子供達に向って大声で、 ベン「Thank you !」 子供達、行け、行けと手を振りながら、 正雄、泰助「オーケー、オーケー!」 と叫ぶ。動き始める機体。 追いかけて走る子供達。そして兵隊達。 中隊長「撃つな!飛行機を出せ!急げ!」 と叫ぶ。兵隊の一…

125 飛行場――門のところ

トラックが急ハンドルを切って入ってくる。急ブレーキで中尉の前にとまると中隊長、飛び降りる。 中隊長「どうなっとる、中尉」 中尉「はあ、それが、九番機が勝手に動いて……」 中隊長「勝手にじゃない!敵兵じゃ、敵兵に乗っ取られたぞ!」

124 飛行場

エンジン音を開いて、中尉と整備兵が出てくる。櫓の歩哨も急いで降りてくる。倉庫から出てくる九番機、子供達と仔犬があとを追う。朝日がさしてくる。左の翼には拙【つたな】いけれどもそれと分かる星条旗。右の翼にはスーパーマンのSの字。そして尾翼の39…

123 河原に向う道

軍曹が中隊長に報告している。 中隊長「敵兵と子供がぐるじゃと!」 軍曹「はい、間違いありません。トラックの乗り捨ててあったところから見て、町に来とるのも確実であります」 中隊長あたりを見回す。すでに雲隠れしている良介。 中隊長「あのガキもそし…

122 倉庫

操縦席のベン右手を上げて振り下ろす。台の上に上がっている徹と孝がプロペラにしがみついて飛び降りる。一発で始動するエンジン。泰助、尾翼の上でまだペンキを持っている。

121 河原へ向う道

敵兵生け捕り隊の一行が先を急ぐ。 組長「でもどうやってその暴れる奴をつかまえたんじゃ?」 良介「ワナや、ワナ。落とし穴に落としたんや」 組長「ほう……そらお手柄やなあ」 中隊長「ところで坊主、お前どうやって川を渡ってきたんや?」 そのとき川上のほ…

120 中尉の部屋

ベッドの上に中尉と整備兵、並んで腰かけている。 整備兵「少しでもおやすみにならんと……」 中尉「学生のときから徹夜には慣れとんだ。徹夜したほうがかえって頭が冴えるのよ。それで、その片腕、打ち抜かれた飛曹はどうなった」 整備兵「はあ、それから出血…

119 倉庫

どっからみつけてきたのか泰助、ペンキの缶とハケを持っている。翼の上に上がると、操縦席に窮屈そうに座って、機器を調べているベンのところへ行って例のコミックをとってくる。開いたコミックを片手に翼に何か描きはじめる泰助。

118 並べられた飛行機

倉庫のあたりから、バケツ、板切れ、藁【わら】などいろんなものを孝、二郎、正雄、俊夫が運んできて翼の上に上がった徹に渡す。徹、手当りしだいに座席にぶち込む。徹、翼から飛びおりて、正雄に 徹「これで飛ぶのにえろう手間がかかるで……あれ泰ちゃんは?…

117 櫓

見張りの兵隊が椅子の上で眠りこけている。山の方が白らんできている。

116 飛行場――倉庫

九番機を見上げている一同。 泰助「これやな、孝【たか】ちゃん」 孝「(胴体の下のタンクをたたいて)これが油やろ。間違いない」 正雄「よっしゃ、飛行機のことはベンにまかしとこ。わしらはなあ……」 とみんなを集めて指示をする。

115 土手

川上めざして走るトラック。あとから伍長の乗った軍馬が駆ける。助手席の軍曹が運転している兵隊四と大声で話している。 軍曹「どれぐらい行けば橋があるんか?」 兵隊四「あと十キロぐらいであります」 軍曹「壊れてもかまんからぶっ飛ばせ!」 タイヤがく…

114 小屋のところ

じっと様子をうかがっている子供達。 あちこちから兵隊が集ってきて、良介と組長を先頭に走り出す。それを見送って小屋のかげから走り出る一行。門の外燈の下を通って奥へ消える。

113 門のところ

良介「……あの騒ぎで逃げられたけど、河原に隠れとんを見張っとんや、早よう早よう」 組長と中隊長、うなずき合って行こうとする。 良介「二人か?おいさんら?二人じゃ危ないよう。暴れ出したら手がつけられん」 中隊長「おい、そこの、おまえ!」 と近くの…

112 小屋のかげ

組長が顔を上げたところを良介見てとって、 良介「あっ組長さんや!」 とささやくと俊夫に食いかけのチョコレートを渡して飛び出ていく。止めようとする徹を孝が制して、 孝「なんぞ考えがあるんや、見よう」 良介が組長に何か熱心に、身ぶりを交えて話して…

111 飛行場――門のところ

ここだけぽっかり外燈がついている。中隊長に頭を下げている組長。 組長「御馳走になりました」 中隊長「いやいや……これから浜の方へいかれるんか?」

110 飛行場――門の前の小屋のかげ

正雄とベン、そして良介と俊夫が休んでいる。二郎の膝で仔犬が寝ている。そこへ徹と泰助と孝が身を低くして戻ってくる。 泰助「だめや、兄ちゃん、見張りが回りを取り囲んどる」 良介「おかしいなあ、普段は誰もおらんのに」 孝「何【なん】ぞ気付いたんかも…

109 兄弟の家

時計が三つ打つ。小さな明かりでまた縫い物をしている浪子。ふっと顔を上げて仏壇を見ると、針を置いて立ち上がる。仏壇の中でキラキラ光っている銀紙の包みをとり上げて、なんだろうと見ています。 時計が三つ打つ。小さな明かりでまた縫い物をしている浪子…

108 飛行場

櫓の上に見張りが一人。そこから見下ろすと、飛行場をとりまいて百メートルおきぐらいに歩哨が立っている。ちゃんと立っているもの、座り込んでいるもの、中には眠りこけているものもいる。

107 土手を登る道(壊れた橋のところ)

こちらは勢いよく登っていくトラック。土手を登りきったところで急ブレーキ。荷台の中の二人、思い切りひっくり返る。ぽかんと口を開けている座席の二人。

106 線路

キキィーと派手な音をたてて貨物列車が急ブレーキをかける。歩くぐらいのスピードに落ちた車輌に子供達、草むらから飛び出て、いろんな方法でしがみつく。ベンは片手で俊夫を抱え、逆の手一本で棒を握りしめる。 機関車の窓から機関士と車夫が顔を出している…

105 町はずれ

乗り捨ててあるトラック。近くの井戸で兵隊達が水を飲んだり顔を洗ったりしている。兵隊二、トラックの方へ小走りで向っていきながら 兵隊二「早よせい。ぶっ飛ばすぞ」 と運転席に飛び乗って手早くエンジンをかける。バックして道に入って三人を乗せると激…

104 線路

孝がレールに耳をあてている。 孝「早よう、急げ、急げ」 俊夫を除いたみんなで燃えそうなものを集めている。ベンがライターと紙きれを使って火をつける。 孝「よっしゃ、みんなこっちや」 と鉄橋とは逆の方へ駆け出す。一同、百メートルほど走るとレールの…

103 倉庫

尾翼にOB-109と掻かれている機体にゆっくり近付いていく中尉。なるべく音をたてないように翼に登り、風防をそーっと開け、上半身を突っ込む。そこで懐中電燈をつけ、計器の下の配線の一つを鋏で切ろうとする。その時、倉庫の奥で戸の開く音。中尉、慌てて鋏…

102 中尉の部屋

ベッドにじっと腰かけている中尉。月明かりで顔の半分だけ浮き上がっている。不意に立ち上がると、とある引き出しをあけて何か取り出す。月光に鈍く光る鋏。

101 海岸――漁師の家の入り口

伍長と軍曹、老人を前に、 伍長「どんなやつでもええ、浮かぶ舟はないんか?」 老人「だからいうとるじゃろ、一ちょだけありはしたが、町の組長さんが乗っていったわい」 軍曹「他にはなんもないんんか。漁師やろうが」 老人「とうぶん漁もしとらんけぃ、全…

100 兵舎――壮行会の席

盃の酒をぐーっと飲み干す中尉。盃を置いて立ち上がると中隊長に向って 中尉「では失礼します」 と軽く敬礼。 中隊長「うん。しっかり寝とくことだ。一応〇六〇〇離陸にしておこう」 中尉「はっ」 と出て行く。見送って、中隊長の隣に腰かけている組長、 組…

99 (F・I)土手の上

子供達とベン、座り込んでしまっている。その回りを元気に走り回る仔犬。泰助、濁流に石を投げ込んでいる。 二郎「アメリカも考えないやっちゃ。せっかく兵隊さん、助けちゃろいうのに」 徹「今日に限って、爆弾、落としていくんやからなあ」 ベンは子供達の…

98 川

橋げただけ残ってあとは消えてなくなっている。雨のせいで泥にごりの水が、ごうごうと流れている。近くの草木も焼け焦げている。(F・O)

97 土手

徹と泰助が先頭で駆け上がってくる。次々にはあはあ言って膝に手を合てがいながら登ってくる子供達。一様に向こう岸を見つめて立ちつくす。

96 土手に続く道

一行、さすがに疲れてとぼとぼ歩いている。深夜だが月明かりでかなり明るい。 徹「良ちゃん、あとどのくらい歩くん?」 良介「この土手の向こうの向こうだよ」 徹「ほんとか……着いたんか!」 と駆け出す。あとを追う子供達。ベンはゆっくり走る。

95 村役の家

兵隊二「へー車が消えたんか。どうりで軍曹殿が慌てよったはずじゃあ。しかし車が消えるたぁな。村役さん、村に車を動かせる奴、おるんか?」 村役「そりゃ、なんがなんでも居【お】らんですたい」 一同、うーんと考え込む。 兵隊二「子供が車を動かせるはず…

94 町中

伍長が町の人をつかまえて聞いている。 伍長「出会い橋を渡らんで飛行場へ行くにはどうすりゃええか?」 町の人「ん……そりゃ浜行って漁師に舟、借りれりゃ早いけんどなあ……」

93 村役の家

兵隊一「とまあガキにこんな[め]に合わされたのよ」 兵隊四「ほう……いや、わしらもなあ、ガキといやあ妙なことが……」

92 町――大通り

焼け焦げた家々の間を馬に乗ってとぼとぼ行く伍長と軍曹。まだなおあとかたづけに右往左往する町の人々。

91 (F・I)村役【むらやく】の家

兵隊四人、晩めしを出してもらっている。供仕をする村役夫人。少しはなれて座っているのが村役。 村役「町はひどうやられましたなぁ」 兵隊四「よりによって我々が銃座に着いとらんときに来よる。奴らも卑怯なもんよ」 この大見えはちょっと気まずく、一同、…

90 (F・I)海岸

たき火を囲んで八人。良介の隣りに座っている徹が 徹「どして良ちゃん、壕へこなんだん?」 良介、うつむく。 徹「俊ちゃん、どして?」 俊夫、助けを請うように良介を見る。 徹「何【なん】ぞ悪さしよう思うとったんやろ?」 ますますうつむく良介。その頭…

89 ごろじいの家

明かりを消して月明かりで木彫りをしているごろじい。口を真一文字に結んで表情が厳しい。(F・O)

88 (F・I)兄弟の家

浪子がいろりばたで縫い物をしている。 開け放した勝手口から孝の母が入ってくる。上がり框【かまち】に腰かけながら 孝の母「やっとおさまったようやねえ」 浪子「ええ、今日のは威嚇やなかったみたいやねえ。……孝【たか】ちゃんもうちの子らと一緒に行った…

87 飛行場

兵舎の入り口で中隊長とさきほどの隣組の組長が立ち話。 組長「はい、そうなんではありますが、しかし、子供があそこまで、うそはつけんと思いまして」 中隊長「あれだけ捜索して見つからなんだものを小学生のガキがとりこにしたと言うのかな?」 組長「はあ…

86 (F・I)海岸(砂浜)

たき火を燃やしているベン。少しはなれて良介と俊夫が座っている。パチパチ燃える火。良介、砂に何か指で書いていたが、急に座りなおすとベンに向って土下座する。 良介「ごめんなさい」 俊夫も座りなおしたところを、おまえもというように頭を押えつけ、土…

85 兄弟の家

浪子、戻っている。上がり框【かまち】に腰を下ろし、頬杖をついて考え事。はっと気付いてかまどの方へ立つ。吹きこぼれて消えかかっているかまど。(F・O)

84 町――焼けこげた家々

すっかり暗くなっている。あちこちでまだくすぶっている。消火の■■■■■■■ができている。泰助と孝と二郎と正雄、路地のところまでやって来る。真っ黒に焦げた荷と荷車。一同、一瞬、立ちすくむが、泰助は燃えかすを引っかき回し始める。徹は壕から壕へと良介と…

83 村――池のはた

村の人達、ところどころ赤く燃えている町の方を見下ろしている。心配そうな浪子さんもいる。夕日が落ち切って水平線だけ