読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

11 (F・I)ごろじいの家

いろりを囲んでごろじいと二人が座っている。ごろじいは火ばしで火をつついて魚を焼いている。その干し魚を食べている正雄と泰助。

ごろじい「それで、その穴は誰にも見つからんかい」

泰助「うん。兵隊さんが動かなんだら……あそこを知っとんのは、徹らぐらいや」

いろりの火のパチパチいう音。

ごろじい「坊らも見たろうが……どこの兵隊やておんなじ……顔の真ん中に鼻があったろう。指やてちゃぁんと十本(と両手を拡げてみる)……早い話がな、みんなおんなじ人間や。じいは昔、船に乗って海を渡っての、異国の人らと商売をしよったんじゃが……みんなええ奴でのぉ……(ため息をついて考え込む)わからん。どうもわからん。何で殺し合いを……どうもわからん」

ごろじい、魚を裏返す。

泰助「そんで、じいはどうすりゃええと思う」

ごろじい、立ち上がって戸棚の方へ何か探しに行く。ごそごそやって油紙の包みをとり出して持ってくる。

ごろじい「まずは怪我を直さんとのぉ……ほれ、薬じゃ。こっちの赤いのは傷を洗って塗るんじゃ。そんで、打ち身しとるとこには、この黒いのじゃ。歩けるいうから骨は折れとらんじゃろう」

正雄「そんで、怪我直ったら?」

ごろじい、焼けた干し魚を二人に渡しながら、

ごろじい「今晩はもうお帰りな。あしたは朝一番じゃろ。それからあとのことは、そいつに聞いておみ」

泰助「聞くいうても、言う事が通じんよ」

ごろじい「それなら心配せんでええ。そのうち分かるようになるからな」

不思議そうに顔を見合わせる正雄と泰助。

(F・O)