36 (F・I)兄弟の家、玄関
勢いよく飛び出してくる二人。
道まで出て、
泰助「昼過ぎまでに、話つける」
正雄「急ぐこたぁないぞ。大人に聞かれんな」
泰助「大丈夫、大丈夫」
と言って駆けていく。少しの間見送った正雄が逆向きに歩き出そうとすると、家の中から、
浪子「正【まさ】ちゃん、正ちゃん」
と声がして浪子が仔犬を抱いて出てくる。
浪子「今日はどこへ行くん?」
正雄「どして?いっつもそんなこと聞かんのに」
浪子「そりゃぁそうやけど……あぁそうじゃこの犬も連れてっておやり。母ちゃんも畑に出なぁいかんけん、ほっといたらかわいそうやろ」
と正雄に仔犬を渡して、あたりを見回して、
浪子「泰【たい】ちゃんは?」
正雄「徹【てっ】ちゃんら、さそいにいった。
浪子「何するんか知らんけど、町の方へは行かれんよ」
正雄「どして町なんか行くん?僕、また泣きべそ掻くやない」
浪子「そうか。それならええんやけど、早うお戻り。雨になるよ」
正雄「うん。ほら、」
と仔犬を放す。元気に駆け出す仔犬。それを追って正雄もスキップをして走り出す。(WIPE)