40 四つ辻

泰助が歩いてくる。角【かど】で走ってきた二郎とはち合わせ。二郎は泰助の後ろに隠れる。(犬の啼き声、近づく)

二郎「(喘【あえ】ぎながら)泰ちゃん……助けて」

大きな真っ黒な犬が走ってきたのを泰助、なんなくあやす。

泰助「どうして逃げるの?」

二郎「だって、追いかけてくるのに」

泰助「あのね、犬はね、逃げるから追っかけてくるんやよ。じっとしてりゃ、なんにもしないんよ」

黒い犬、おとなしくなって、トボトボ歩き出す。

泰助「あっ、それでね、二郎【じろ】ちゃん……」

(WIPE)