48 くぼ地
正雄とベンを取り巻いている四人。正雄が仔犬を抱いている。
正雄「こいつが飛び出していくもんやから二人で追っかけたんや。危のうかった」
徹と二郎と孝、ベンをまじまじと見ている。ベンが笑いかけたのに応えて、徹、右手を挙げ、孝、微笑み、二郎、無理に笑おうとして口がゆがむ。
徹「泰ちゃん、ひょっとして、板菓子、あの箱ん中か?」
泰助「うん」
孝「それより、無電の機械が入っとんのやろ」
泰助「うん」
徹「そんな、似ても焼いても食えんもんより、あの菓子や」
孝「取り返すんなら急がんと」
泰助、みんなを見渡して、
泰助「兄ちゃんは、ベンと、居【お】って」
と手拭いで頬被り、棒切れを持って、
泰助「ほな、いくでェ」
徹と孝も頬被り。二郎、逃げ腰で、
二郎「おら、知らんけん!」
と言って逃げ出そうとする。孝、腕を掴んで引き止めて、
孝「二郎【じろ】ちゃんは、箱を持って逃げるだけや」
(WIPE)