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55 ごろじいの家の前

泰助が一番に飛び出してきてあたりを見回す。一層雲が多くなってきている。

泰助「(納屋に向って)ベーン」

弁当を抱えた徹、箱をかかえた正雄、孝、二郎、と出てきて、最後にごろじいが出てきたときに、ベンも仔犬を抱いて納屋から出てくる。仔犬を泰助に渡して、ごろじいの前に行く。

泰助「(仔犬をなでながら)おまえも行くか、よし、来い」

と荷車にのせる。五人で荷を積んで準備をする。ごろじい。ベンと向い合って、じーっと顔を見上げて、目を見つめていたが、不意に右手を差し出して握手をもとめる。ベン、ちょっとびっくりして、急いで握手。左手も添えてがっちりです。

ベン「Thank you.... Thank you.」

ごろじい「オーケイ、オーケイ」

ベン、またびっくりして、さらにがっちりごろじいの手を握る。二人を見上げている泰助たち。

泰助「兄ちゃん、ほんとに、[おけ]が通じたみたいやで」

正雄「うん、ありゃ通じるんや。……さあ、急ご」

とベンの背中をたたく。

ベンを荷車の上に横にすると、巧みに筵【むしろ】をかける子供達。両側を木箱や俵で囲んで、どっから見ても供出物を運ぶ車に仕立てる。ベン、顔にかけられた筵を少しめくって、

ベン「May the Force be with you !」

と言うとすぐに顔をひっこめる。子供達、きょとんとして、

泰助「今の、何言うたん?」

とごろじいに質問。ごろじい困って、

ごろじい「ん……今のはな、……そうじゃ、がんばっていきましょい。ちゅうたんじゃ」

徹「ほんとに?」

ごろじい「ああ、ほんとじゃ。じいはこれでも昔なぁ……」

泰助「ごろじいの言うことや、まちがいない。さぁ行くでェ」

と梶棒を引き上げる。前に泰助と徹。後押しに孝、二郎、正雄。二郎も、もう真顔で押している。荷車と見送るごろじいの間を低く燕【つばめ】が飛び過ぎる。