68 村――四つ辻
ばったり出会う伍長一行と軍曹。
伍長「(びっくりしてあわてて敬礼をして)どうされました、軍曹殿。供出米を運んでいかれたのでは……」
軍曹「いや……車が故障じゃ。伍長こそどうした。アメリカ兵生き残りの噂の真偽はつかめたか」
伍長「はあ、それが、……」
軍曹「それより馬はどうした。連れて帰るように言うたはずじゃが」
伍長「はあ、それが、……あんまり降るもんで、寺に預けております」
軍曹「寺だと?神社だろう」
伍長「はあ?」
軍曹「その寺はどっちの方じゃ」
伍長「(回れ右をして)あちらの方であります」
軍曹「でたらめを言うな。それはこっちじゃろう」
と指をさした方から馬をひいた兵隊二人がやってくる。頭を掻く伍長。うしろで小さくなっている兵隊一と兵隊二。
伍長「まぁここでは何ですからどこぞの家で休まれては……」
とあたりを見渡す。もう夕方。ひとっこ一人見えない。