75 共同壕の中

婦人一「ちぃと見ん顔ぎりじゃが、どの辺のうちの子じゃ?」

正雄「大谷から来たんです」

婦人二「子供ぎりでか?」

一同、うなずく。

婦人二「まあ、どうじゃろか!こんな小まい子らが大谷から来た言うとるが、なあ小父【おい】さん」

と言われた老人、耳が遠いらしく反応しない。

婦人一「また何しにや?」

一同、申し合わせたように無言。

婦人二「大谷の方までは空襲もいかんから、壕へ入ったのなんか初めてじゃろ?」

婦人一「そういや、頭巾もつけんで」

婦人二「まあ、いっつもの威かしじゃろうがの」

そこへ泰助が入ってくる。

徹「あれ、良と俊は?」

泰助「先に来たんとちがうん?」

徹、はっとして壕の中を目を凝らして見回す。