82 煙の中

俊夫が泣き出している。良介、どうしてよいかわからない。あちこちで焼け落ちる家々。二人、道路の真ん中に座わり込んでしまう。突然二人の脇を抱える大男。ベンだ。二人を起こすと大声で、

ベン「Follow me !」

とどなる。胸に吊った箱からは仔犬が顔を出している。火柱や、崩れた家々を巧みに避けながら、煙の合い間に見える夕日をめざし、二人を引っ張って突き進んでいく。