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87 飛行場

脚本3・9

兵舎の入り口で中隊長とさきほどの隣組の組長が立ち話。

組長「はい、そうなんではありますが、しかし、子供があそこまで、うそはつけんと思いまして」

中隊長「あれだけ捜索して見つからなんだものを小学生のガキがとりこにしたと言うのかな?」

組長「はあ、そのようになりますなあ」

中隊長「ふうん。まあ、あの空襲じゃ、生きてはおるまいが……まあ、ここの警備は固めよう」

組長「はあ、そうしていただければ、私としても、……それじゃ」

と頭を下げて帰ろうとする。

中隊長「ああ、少しよっていかれんか。ちょうど今井中尉の壮行会をやっておるんだ」

組長「壮行会、と言いますと、とうとうここからも特攻がでるちゅう……」

中隊長「いやそうではない。まあ、似たようなもんではあるがな」

組長「はあ?」

中隊長「まあ来たまえ」

組長「じゃ、ちょっとだけ」

二人、中に入って並んで廊下を行く。

組長「本日の被害は、どれくらいでした?」

中隊長「ここは大したことはなかった。敵も目標を誤ったようじゃ。……町はひどかったらしいのぉ」

組長「警報が早かったんで逃げ遅れがなかったんが幸いでしたが、今までで一番ひどかったです」

中隊長「それなら、その敵兵とやらも生きてはおるまい」

組長「はあ、そうですなあ。……そうなら不憫ですなあ」

中隊長「この時局に、敵兵に情をかける必要はあるまい」

組長「はあ、しかし自分の味方に落とされた焼夷弾で焼け死ぬるんは、ちょっと……」

中隊長「ふ……うむ」

とある部屋を通り過ぎようとしてはっとして引き返して戸をたたく。

中隊長「わしだ」

すぐさま戸が開いて敬礼する兵隊。

中隊長「周囲に歩哨を立てる。十名、今すぐ集めてくれ。復唱よし。すぐ行け」

兵隊、返事と敬礼を同時にすると廊下を走っていく。(F・O)