読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

103 倉庫

脚本3・9

尾翼にOB-109と掻かれている機体にゆっくり近付いていく中尉。なるべく音をたてないように翼に登り、風防をそーっと開け、上半身を突っ込む。そこで懐中電燈をつけ、計器の下の配線の一つを鋏で切ろうとする。その時、倉庫の奥で戸の開く音。中尉、慌てて鋏をポケットにしまう。懐中電燈の丸い光があちこち照らしながら近付いてきて、中尉をとらえる。

整備兵「こりゃ、中尉殿でしたか。何【なん】ぞご用で?」

中尉「(しどろもどろして)昼間、……お守りを落としたようでな。……縁起が悪いから、探しとこ思てな」

整備兵「そらいかんですなあ、私が探します」

中尉「い、いや、今見つけたとこだ」

整備兵「そらよかった。しっかり持ってがんばって来て下さいよ。万事、整備しとりますけん、絶対帰って来て下さいよ」

中尉、翼から降りて、

中尉「ああ。……ここで寝泊りしとんのか?」

整備兵「明日の朝が早いから、裏で寝とります」

中尉「そらご苦労やなあ。……ちっとぼくの部屋へこんか。話がしたいんでな」

整備兵「はあ、かまわんですが、ちょっとばかり待っとって下さい。すぐ来ますけん」

と奥へ戻っていく。中尉、倉庫の外へ出るとポケットから鋏を取り出し、握りしめて――草むらの中へ投げ込む。