106 線路
キキィーと派手な音をたてて貨物列車が急ブレーキをかける。歩くぐらいのスピードに落ちた車輌に子供達、草むらから飛び出て、いろんな方法でしがみつく。ベンは片手で俊夫を抱え、逆の手一本で棒を握りしめる。
機関車の窓から機関士と車夫が顔を出している。
機関士「何【なん】やろう?」
車夫「焼夷弾の燃えかすと違いますか」
機関士「びっくりさせやがる。線路が燃えよんかと思うたわ」
二人、顔を引っ込める。止まりかけていた機関車がゆっくり加速し始める。そのままゆっくり鉄橋にかかる。
二郎、震えてくる。隣にいた徹、大声で、
徹「下見るな!二郎、こっち見ぃ」
ベンの手に抱えられた俊夫も、胸の箱の仔犬も縮みあがっている。鉄橋の終わりの方になると、
孝「鉄橋がすんだらすぐ飛び降りぃ!坂になると速うなるでえ!」
言い終ると同時にまず孝が飛び降りる。次々に飛び降りる子供達。最後になった二郎、覚悟を決めて飛ぶ。下り坂を勢いよく加速していく貨物列車。