120 中尉の部屋
ベッドの上に中尉と整備兵、並んで腰かけている。
整備兵「少しでもおやすみにならんと……」
中尉「学生のときから徹夜には慣れとんだ。徹夜したほうがかえって頭が冴えるのよ。それで、その片腕、打ち抜かれた飛曹はどうなった」
整備兵「はあ、それから出血がひどォなりましてな。人間ちゅうもんは血ぃ抜かれると眠うなるんじゃそうですな。それで右手だけで操縦桿を握っとんやそうですが、寝てしもたら終りじゃけ、いうんでバッと手を離してほっぺたをしばき上げよったそうですらい。下から見よるとそんでもってフラフラしとんで気が気じゃなかったですらい」
中尉「ほう……学生じぶん、講義中に眠とうなって頬をたたいたことはあったがなあ。そうか、……血がへると眠とうなるんか」
と幾分明るくなった外を見つめる。