後書き 脚本3・9
後書き
S61・8・30 執筆完了
H18・11・31 Web掲載
終戦間近の昭和二十年、九州でのお話。山ん中に墜ちた米軍偵察機。一人、生き延びたアメリカ兵が最初に出会ったのは、十才と十二才の子供兄弟です。学校の先生に鬼畜米英と教っていた彼らは、その目で何も違わない人間であることを確認します。そして米兵の差し出したチョコレートがこの言葉の通じない、身の丈が倍ほども違う人間を結びつけます。話のわかる祖父、ごろじいの力添えもあり、けがを直した米兵は兄弟とすっかり仲よくなります。そうしているうちに兄弟は米兵を故郷へ帰してやろうと思いつきます。近所の遊び仲間を引き入れ、隣町の飛行場までの冒険が始まります。そして終戦。
不時着した飛行機を飛ばす実話は2013年に「飛べダコタ」に先を越されました。戦争を知る世代もこの30年で随分亡くなりました。
戦争を全く体験していない僕のようなものが書くべきものではないのでしょうが1982年に「E・T」を見て、これは反戦映画だなと思ったのがきっかけで、以来、昭和一ケタ、二ケタの人の話を聞きあさってなんとかつじつまを合わせました。
したがって前半は全く「E・T」の翻案でして、後半は「隠し砦の三悪人」と思っていただければよいと思います。「スプラッシュ」のような「E・T」のリメイクが許されるのだから、この盗作をスピルバーグは許してくれると思います。スピルバーグ自身「E・T」は反戦映画だと語っています。スピルバーグはいまだにこの言葉が通じない、背格好、年齢の全く異なる二人の間に友情が成立するというテーマをBFGなどでおっています。情況設定は大江健三郎の「飼育」に酷似していますが、大江さんは僕の高校の先輩にあたる人でもあり大学の先輩でもあるから、大目に見ていただけるのではないかと甘い期待を抱いております。
蛇足ながら高校(旧制中学)の先輩には、伊藤大輔、伊丹万作、佐伯清、山本薩夫、伊丹十三、大友柳太郎、早坂暁、の諸氏がおられます。この人達のあとに少しでも続こうと思っていた者でもあります。
残りの人生でお金を工面してこの脚本を、と思っていたら、MSA(多系統萎縮症)という不治の病に冒されてしまいました。間もなく私はこの世から消えてなくなります。脚本を手直しして、絵コンテを書いて、とおもっていたのですがどうやらその時間はなさそうです。著作権を完全に放棄しますのでどなたかこの反戦映画を世に出していただけないかと思い、ここに掲載する次第です。
〈登場人物〉
泰助(10)正雄の弟
正雄(12)
浪子【なみこ】(32)泰助、正雄の母
ごろじい(70)浪子の亡夫の父
徹【てつ】(10)
孝【たかし】(10)
二郎(10)
徹の母(35)
徹の祖母(65)
孝の母(42)
今井中尉(28)
中隊長(45)
伍長(40)
兵隊一(40)
兵隊二(45)
軍曹(35)
兵隊三(30)
兵隊四(30)
整備兵(55)
隣組の組長(55)
村役【むらやく】(65)
村役夫人(60)
良介(10)徹のいとこ
俊夫(8)良介の弟
車夫
村と町の人たち
兵隊たち
ベン(30)墜ちたアメリカ通信兵