116 飛行場――倉庫
九番機を見上げている一同。
泰助「これやな、孝【たか】ちゃん」
孝「(胴体の下のタンクをたたいて)これが油やろ。間違いない」
正雄「よっしゃ、飛行機のことはベンにまかしとこ。わしらはなあ……」
とみんなを集めて指示をする。
114 小屋のところ
じっと様子をうかがっている子供達。
あちこちから兵隊が集ってきて、良介と組長を先頭に走り出す。それを見送って小屋のかげから走り出る一行。門の外燈の下を通って奥へ消える。
111 飛行場――門のところ
ここだけぽっかり外燈がついている。中隊長に頭を下げている組長。
組長「御馳走になりました」
中隊長「いやいや……これから浜の方へいかれるんか?」
110 飛行場――門の前の小屋のかげ
正雄とベン、そして良介と俊夫が休んでいる。二郎の膝で仔犬が寝ている。そこへ徹と泰助と孝が身を低くして戻ってくる。
泰助「だめや、兄ちゃん、見張りが回りを取り囲んどる」
良介「おかしいなあ、普段は誰もおらんのに」
孝「何【なん】ぞ気付いたんかも知れん。こまったなあ」
正雄「まあ、あせっても仕様がないけ。これでも食うて様子を見よや……あとちょうど一枚ずつや、ほい、ほい……」
と一枚ずつチョコレートを配る。いろいろな食べ方をされるチョコレート。食べながらも子供達、飛行場の方から目を離さない。
子供達、さっと小屋のかげに入る。門のところに人影二つ。