115 土手

川上めざして走るトラック。あとから伍長の乗った軍馬が駆ける。助手席の軍曹が運転している兵隊四と大声で話している。

軍曹「どれぐらい行けば橋があるんか?」

兵隊四「あと十キロぐらいであります」

軍曹「壊れてもかまんからぶっ飛ばせ!」

タイヤがくぼみを通って兵隊達、座席で大きくバウンドする。

113 門のところ

良介「……あの騒ぎで逃げられたけど、河原に隠れとんを見張っとんや、早よう早よう」

組長と中隊長、うなずき合って行こうとする。

良介「二人か?おいさんら?二人じゃ危ないよう。暴れ出したら手がつけられん」

中隊長「おい、そこの、おまえ!」

と近くの歩哨を呼ぶ。

良介「三人でも危ないよう、生け捕りにしたいんやろ」

112 小屋のかげ

組長が顔を上げたところを良介見てとって、

良介「あっ組長さんや!」

とささやくと俊夫に食いかけのチョコレートを渡して飛び出ていく。止めようとする徹を孝が制して、

孝「なんぞ考えがあるんや、見よう」

良介が組長に何か熱心に、身ぶりを交えて話しているのが見える。

110 飛行場――門の前の小屋のかげ

正雄とベン、そして良介と俊夫が休んでいる。二郎の膝で仔犬が寝ている。そこへ徹と泰助と孝が身を低くして戻ってくる。

泰助「だめや、兄ちゃん、見張りが回りを取り囲んどる」

良介「おかしいなあ、普段は誰もおらんのに」

孝「何【なん】ぞ気付いたんかも知れん。こまったなあ」

正雄「まあ、あせっても仕様がないけ。これでも食うて様子を見よや……あとちょうど一枚ずつや、ほい、ほい……」

と一枚ずつチョコレートを配る。いろいろな食べ方をされるチョコレート。食べながらも子供達、飛行場の方から目を離さない。

子供達、さっと小屋のかげに入る。門のところに人影二つ。