38 畑

ばあさんが大根を抜いている。それを集めて歩く徹。そこへ泰助が、平均台を渡るように両手を広げて、あぜを通ってくる。

泰助「徹ちゃーん。ちょっと」

徹、かごを置くと、巧みに畝【うね】を飛び超えてくる。

徹「なんだい、泰ちゃん」

泰助「いい[もん]あげる。これ食ってみな」

とチョコレートを一かけら差し出す。徹は、受け取ろうとするが手が汚れているのに気付いて、手の泥を服になすりつける。

泰助「ほら」

と徹の口にチョコレートを差し込む。徹、もぐもぐやって、目を丸くする。

徹「なんだい、これ。おいしいね。もっとおくれよ」

泰助「今はあんまり持ってないけど、頼みを聞いてくれたら、もっとあげるよ」

徹「なんだい?頼みって」

泰助「いそがしいのかい?」

と徹の肩ごしに、ばあさんの方を見る。

徹「ううん、暑くなるまえにやめるって」

泰助「じゃあ、お昼食べたら、ごろじいとこに来てよ。……はい、もう一つ」

とチョコレートを一かけら、徹の口に差し込む。(WIPE)