95 村役の家
兵隊二「へー車が消えたんか。どうりで軍曹殿が慌てよったはずじゃあ。しかし車が消えるたぁな。村役さん、村に車を動かせる奴、おるんか?」
村役「そりゃ、なんがなんでも居【お】らんですたい」
一同、うーんと考え込む。
兵隊二「子供が車を動かせるはずはなし」
兵隊三「(急に大声で)こりゃ事じゃ!アメリカ兵はぴんぴんしとんじゃ、子供らとぐるになっとんや」
兵隊一「どういう事や」
兵隊三「考えてみぃ。この辺で車を動かせる奴がおったら、そら、アメリカ兵じゃ!」
兵隊二「そうじゃ、あいつらぐるになって……」
兵隊四「(立ち上がりながら)こうしちゃおれん。町へ入って何【なん】ぞやらかすぞ」
四人、おっ取り刀(銃剣)で飛び出して行く。あっけに取られている村役夫妻。
食べかけの膳が残る。