4 MSA 発汗 

最初に異変を感じたのは汗で、後頭部だけからはんぱない量でていました。ある一定の温度をこえると汗を吹いたようになります。ぽたぽたとびちるくらいです。そのうちに上半身全部から発汗するようになり、5-9月には電車に乗って座っている人の前に立つのも憚られるくらい汗っかきになりました。以下の記事をみつけたのは随分あとでしたが。一方下半身からはいっさいはっかんしなくなり、夏場でも下半身はひんやりかんじる始末で1時はユニクロのヒート・テック(したばき)を真夏でもはいていました。

 この四、五年、異常なほどの汗をかくようになりました。少し動いただけで、頭や顔から流れ落ちるように汗が出て、ハンカチでは間に合わないほどです。脈拍が約七十と少し多いほかは、年一回の人間ドックで、特に異常なしと言われてますが、何かの病気ではないかと心配です。(千葉・61歳男性)
 ◇渡辺晴雄・東京女子医大内科名誉教授
 ◆神経系の病気が原因か
 A 手のひらや足の裏を除いた全身の発汗は普通、体温を一定に保つために必要な生理機能として「温熱性発汗」といいます。また、冷や汗など精神的緊張でかく汗を「精神性発汗」、辛い食べ物を食べた時に出るものを「味覚性発汗」といいます。
 これらの発汗が異常に多いケースを「多汗症」といいます。多汗症の原因としては、種々の内分泌疾患や神経疾患、慢性感染症などのほか、特殊な食習慣(肉料理を中心とした高たんぱく食)や、辛い食べ物を好む、し好によるものが考えられます。
 ご質問者のケースでは、まず、「数年にわたる頭部・顔面を主とする多量の発汗が慢性傾向を示す」「人間ドックで異常が見つからない」などの点から、一つの原因として自律神経系の病気が考えられます。
 パーキンソン病や多系統委縮症などがそれで、体温調節に関する発汗を支配する神経経路に障害を生じた結果、下半身に無汗症を起こし、それが次第に広がると、その代償として他の健全な部分である上半身、特に他の部分より発汗が早い皮膚を持つ顔面などから多汗をみます。
 これらの場合、比較的初期段階では診断が難しくもあります。このためパーキンソン病では、動作の緩慢や前かがみの姿勢、表情が乏しい、便秘傾向などが示された時、多系統委縮症ではいびきをかく、立ちくらみなどの起立性低血圧傾向が見られたら、専門医を受診すべきです。また、糖尿病による自律神経障害でも、似たような症状が起こり得ます。
 この方は「脈拍数がやや多い」ということですので、もう一つの原因として、体内の代謝こう進をきたして、体温が高まる甲状腺(せん)や、脳下垂体のある種のホルモン分泌の過剰を示す疾患も考えられます。
 甲状腺に関する病気としてはバセドウ病、脳下垂体では先端巨大症などが挙げられます。いずれも種々の検査が必要で、やはり専門医を受診されることを勧めます。
 
 写真=渡辺晴雄名誉教授

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