71 良介の家
なおも話し続ける孝。
孝「な、こういうのを敵【かたき】というんよ。な、それで、父ちゃんとられたとこまでは一緒や。でもな……そこに居るアメリカ兵がじかに殺【や】ったんとは違うやろ。それどこか、いやいや戦争にとられとんや。な、わかる?」
徹「わかったか?そこに居るアメリカさんは何【なん】も悪いことしとらん。それどこか、こんなうまいもんくれるんやで」
と箱の中からチョコレートを一枚出して半分にして二人に渡す。俊夫は、握り飯を止めてさっそく舐め始める。良介は手に持ってじっと考えている。
徹「ええな。飛行機のあるとこまで、裏道で行くんや。も少し暗うなったら行くで」
まだ考えている良介。それを見上げながらチョコレートを舐める俊夫。